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人事労務コラム Column

改正育児・介護休業法

2024.08.01

法改正情報

【2025年(令和7年)4月・10月施行!】育児・介護休業法等の改正の概要~ 「育児」に関する改正ポイントについて ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

本年の通常国会で成立した育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法にかかる改正法(※)が2024年5月31日に公布されました。公布日以降、順次施行される予定です。

改正法には、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるよう、様々な改正事項が含まれており、実務にも大きな影響が生じます。そこで、今回は、改正育児・介護休業法および改正次世代育成支援対策推進法のうち、育児に関する改正ポイントについて見ていきます。
※正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」

次回コラム
【2025年(令和7年)4月・10月施行!】育児介護休業法等の改正の概要 ~ 「介護」・「次世代法」に関する改正ポイントについて ~

 

1.2025年4月1日に施行される改正事項

育児・介護休業法の育児に関する改正のうち、2025年4月1日に施行される改正事項は次の(1)から(5)のとおりです。

(1)子の看護休暇の見直し

子の看護休暇について、次の①から④の事項が見直されます。

① 対象となる子の範囲

現行法では、小学校就学前までの子を養育する労働者が休暇を取得できるとされていますが、改正後は、「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子(小学校第3学年修了前の子)」に拡大されます。

② 取得事由の拡大

子の看護休暇が取得できる事由は、病気やケガをした子の世話のほか、予防接種または健康診断を受けさせることとされていますが、改正後は、これらに加えて感染症に伴う学級閉鎖等に伴う子の世話および子の学校行事等への参加が追加されます。なお、「子の学校行事」の詳細について、改正法に関する厚生労働省のパンフレットでは、入園(入学)式、卒園式等が省令で示される予定とされています。

③ 名称の変更

上記②で見たように取得事由が拡大されることにより、休暇の名称が「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変更されます。

④ 労使協定の締結により除外できる労働者

子の看護休暇は原則として、対象となる子を養育する労働者が利用できる制度です。現行法では、「継続して雇用された期間が6ヵ月未満の労働者」、「週の所定労働日数が2日以下の労働者」、「業務の性質もしくは業務の実施体制に照らして、厚生労働省令で定める1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(時間単位の取得についてのみ)」については、労使協定を締結することにより制度利用の対象外とすることができますが、改正後は、上記要件のうち、「継続して雇用された期間が6ヵ月未満の労働者」が撤廃されます。

(2)所定外労働の制限の対象となる子の範囲の拡大

現行法は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求することにより、所定外労働の制限(残業免除)を受けることができますが、改正後はその範囲が小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に拡大されます。

(3)育児短時間勤務制度の見直し

現行法は、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする育児短時間勤務制度の措置を講じなければならないとされています。>

この措置は、業務の性質または業務の実施体制に照らして、育児短時間勤務措置の実施が困難と認められる業務に従事する労働者について、労使協定により適用を除外することが可能とされています。この場合、現行法では、適用除外とした労働者に対して、以下の①から④までのいずれかの代替措置を講じなければならないこととされていますが、改正後は、これらに加えて、⑤在宅勤務等の措置が追加されます。

【育児短時間勤務措置の適用を除外した労働者に対する代替措置】

①育児休業に関する制度に準ずる措置
②フレックスタイム制
③始業または終業時刻の繰上げまたは繰下げ(時差出勤)
④事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
⑤在宅勤務等(改正により追加)

 

(4)育児のための在宅勤務等の措置の導入(努力義務)

小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者に関しては、子の年齢等に応じて定められた措置を講じる努力義務が課せられていますが、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対して講じる措置として、「在宅勤務等」が追加されます。

(5)300人超の企業に育児休業取得状況の公表の義務づけ

現行法では、常時使用する従業員数1,000人超の事業主に対し、毎年少なくとも1回、男性の育児休業取得率等(育児休業等の取得割合または育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれか)の公表が義務づけられていますが、改正後は、300人超の事業主に拡大されます。

2.「公布日から1年6ヵ月を超えない範囲内で政令で定める日」に施行される改正事項

育児・介護休業法の育児に関する改正のうち、公布日から1年6ヵ月を超えない範囲内で政令で定める日に施行される改正事項は、次の(1)および(2)のとおりです。なお、施行期日の政令案(労働政策審議会 雇用・環境均等分科会資料)によれば、施行日は2025年10月1日予定とされています。

(1)個別の意向聴取と配慮の義務づけ

現行法では、労働者が妊娠・出産等の申出をした際に、個別に育児休業に関する制度等について周知することおよび育児休業取得の意向確認をすることが義務づけられています。

改正後は、これに加えて仕事と育児の両立に関する就業条件について労働者に意向聴取し、その意向に配慮することが義務づけられます。なお、意向聴取の方法や具体的な配慮の例は、今後省令や指針により示される予定ですが、厚生労働省のパンフレットによれば、意向聴取の方法については「面談や書面の交付等」、具体的な配慮の例については「勤務時間帯・勤務地にかかる配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等」がそれぞれ示される予定とされています。

(2)柔軟な働き方を実現するための措置の義務づけ

子の年齢に応じて柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことが可能となるよう、子が3歳以上、小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者に対して、下記の①から⑤の中から2以上の措置を選択して講じることが新たに事業主に義務づけられます。労働者は、事業主が講じた2以上の措置から1つを選択して利用することができることとされます。

【フルタイムでの柔軟な働き方を実現するための措置】

① 始業時刻等の変更
② 在宅勤務等(10日/月、原則時間単位で取得可とする必要あり※)
③ 保育施設の設置運営等※
④ 新たな休暇の付与(10日/年、原則時間単位で取得可とする必要あり※)
⑤短時間勤務制度

※今後省令で示される予定の事項
 

本制度の措置を選択し、講じようとするときは、あらかじめ、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、そのような労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者から意見を聴かなければならないこととされます。

また、労働者がいずれの制度を選択するか判断できるよう、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、省令で定める期間内に、本制度において講じた措置の内容等について、個別の周知と意向確認をするとともに、上記2(1)の個別の意向聴取と配慮も行う必要があります。

3.おわりに

今回は育児に関する改正について見てきました。これらの改正に伴って就業規則の改定等が必要となります。また、2025年10月1日施行予定の柔軟な働き方の措置に関しては、自社の労働者の両立支援に対するニーズの把握や状況を把握することも必要になることが考えられます。このため、改正法の施行に向けて早めに準備を進めていくことが肝要です。

次回は、育児・介護休業法の介護に関する改正および次世代法の改正について見ていきます。

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以上

 

 


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