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人事労務コラム Column

2024.04.15

法改正情報

【人事・労務関連】2024年(令和6年)10月以降施行 主な法改正事項

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回は、2024年(令和6年)4月施行の主な法改正事項について解説しましたが、2024年10月以降の下半期にも、フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の施行や社会保険の適用拡大など、重要な法改正が予定されています。

そこで、今回は2024年10月以降に施行される改正事項について解説していきたいと思います。

▽前回コラム
【人事・労務関連】2024(令和6)年4月施行 主な法改正について

 

1.2024年10月以降に施行される主な改正

2024年10月以降に施行される主な改正事項は以下のとおりです。

法律(施行時期) 改正項目
フリーランス保護法
(2024年11月までに施行)
【新設】
フリーランスと企業等の発注事業者の間の取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備
労働者災害補償保険法
(2024年11月までに施行)
特別加入者の範囲拡大(フリーランスの追加)
健康保険法・厚生年金保険法
(2024年10月1日)
51人以上の企業等の短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
児童手当法
(2024年10月1日※)
児童手当の拡充
確定拠出年金法
(2024年12月1日)
拠出限度額の見直し
健康保険法等
(2024年12月2日)
従来の健康保険証廃止、マイナ保険証への移行

 

※現在、国会にて審議中
 

2.改正事項の内容について

次に、上記1.で挙げた各改正事項の概要について見ていきたいと思います。

 
(1)フリーランス保護法の新設

近年、働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が普及する一方で、フリーランスが取引先との関係でさまざまなトラブルに遭っていることが問題となっています。そこで、取引上弱い立場に置かれやすいフリーランスが業務委託として受けた業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、フリーランスにかかる取引の適正化および就業環境の整備を図ることを目的として、フリーランス保護法が制定されました。

本法の制定により、フリーランスへ業務委託を行う際に、発注事業者に下記の義務が課されることになります。なお、発注事業者が従業員を使用しているか否か等により、課される義務の範囲が異なります。

【図表1 発注事業者に課される義務の項目と内容】

施行日は公布の日から起算して1年6ヵ月を超えない範囲内とされているため、2024年11月までには施行される見込みです。
 
(2)特別加入者の範囲拡大(フリーランスの追加)

(1)のフリーランス保護法の制定と併せて労災保険法の特別加入の制度も変わります。特別加入制度とは、労働者ではない中小事業主や一人親方などのうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる一定の人に、労災保険に特別に加入することを認める制度です。今回の改正により、フリーランスも労災保険の特別加入の対象として追加されることになりました。

なお、改正事項の施行日は(1)のフリーランス保護法の施行日と同日とされています。

 
(3)短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大

短時間労働者の健康保険・厚生年金保険(社会保険)の適用については、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者と比較して4分の3以上である場合に通常の労働者と同様に被用者保険を適用することとされていますが、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等の場合は、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、以下の①~④の要件をすべて満たす短時間労働者については社会保険を適用しなければならないこととされています。

① 週の所定労働時間が20時間以上であること
② 賃金月額が8.8万円以上であること
③ 2ヵ月を超える雇用の見込みがあること
④ 学生でないこと

 

上記の短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、2024年10月から、厚生年金保険の被保険者数が「51人以上」の企業等で働く短時間労働者についても社会保険加入が義務化されることになりました。

 
(4)児童手当の拡充

2024年2月16日、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」が国会へ提出されました。この法案には児童手当法の改正が含まれており、法案が成立した場合には2024年10月より児童手当が拡充され、図表2のとおり変更される予定です。

 
【図表2 現在と改正後の児童手当の内容】

※特例給付:所得制限限度額を超えている人(上限あり)に対する給付
 
(5)拠出限度額の見直し

企業型DC(企業型確定給付企業年金)およびiDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額について見直しが行われます。

まず、企業型DCの拠出限度額について、これまではDB(確定給付企業年金)や厚生年金基金など他制度に加入している人については、他制度の掛金水準にかかわらず、一律に月額27,500円とされていましたが、改正後は、55,000円から他制度掛金相当額を差し引いた額が拠出限度額とされることになりました。

 

 

【図表3 現行と改正後の企業型DCの拠出限度額の例】

次に、iDeCoの拠出限度額については、企業型DCと他制度に加入している場合、月額27,500円から「企業型DC事業主掛金額」を差し引いた額(上限12,000円)とされていましたが、改正後は、55,000円から「企業型DC事業主掛金額と他制度掛金相当額」を差し引いた額とされます。また、他制度のみに加入している場合のiDeCoの拠出限度額も同様に変更されます。


 
【図表4 現行と改正後のiDeCoの拠出限度額】

上記の見直しにより、DB等の他制度のみに加入する者は、他制度掛金相当額によっては、iDeCoの掛金の上限が小さくなったり、iDeCoの掛金の最低額(5,000円)を下回り、掛金を拠出できなくなることがありますので、自身の拠出額について確認が必要です。

なお、今回の見直しによりiDeCoの掛金を拠出できなくなった場合で、資産額が25万円以下である等の一定の支給要件を満たした場合には、脱退一時金を受給することができるようになります。

 
(6)健康保険証廃止、マイナ保険証への移行

マイナンバーカードの健康保険証(マイナ保険証)利用は2021年10月より開始されていますが、従来の健康保険証も使用することは可能です。この点について、今後のマイナ保険証の利用促進に向けて健康保険法等の一部が改正され、健康保険証は2024年12月2日に廃止されることとなりました。経過措置として、発行済の健康保険証は改正法施行後1年間に限り、有効とされています。また、マイナンバーカードによりオンライン資格確認を受けることができない状況にある人については、本人もしくは保険者からの求めに応じ、有効期間の限度を1年とする「資格確認書」を交付することとされています。
 

3.おわりに

今回、2024年10月以降の法改正事項について見てきましたが、とくに(1)のフリーランス保護法や(3)の短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用拡大においては、改正法が適用される企業では、必要な対応を迫られますので、早めの対応が肝要です。

以上

 


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