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人事労務コラム Column

2025.03.15

法改正情報

【2025年4月施行】改正育児・介護休業法の実務対応を解説!(介護編) ~ 厚生労働省の『Q&A』をもとに ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回は、厚生労働省の『令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A』(以下「Q&A」という。)から、育児に関連する内容を解説しました。今回は介護に関連する改正について見ていきます。

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2025年4月・10月施行】改正育児・介護休業法の実務対応を解説!(育児編) ~ 厚生労働省の『Q&A』をもとに ~

 

1. 育児・介護休業法等の介護に関連する改正概要と施行時期

改正育児・介護休業法等の介護に関連する主な改正事項は次のとおりです。

介護に関する改正内容 施行時期
介護休暇の見直し 2025年4月1日
介護両立支援制度等の個別周知・意向確認の義務づけ
介護両立支援制度等の早期の情報提供の義務づけ
介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備の義務づけ
介護期の在宅勤務等の努力義務化

 

2.Q&Aの内容から見る実務対応

では、Q&Aの内容について見ていきましょう。今回は介護に関連する改正のうち、新たに事業主に義務づけられる「介護両立支援制度等の個別周知・意向確認」、「介護両立支援制度等の早期の情報提供」および「介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備」にかかるQ&Aを一部取り上げて解説します。

なお、以下のQ&Aの内容は、適宜要約して掲載しています。

(1)介護両立支援制度等の個別周知・意向確認の義務づけ

【Q4-2】

Q.  個別の周知・意向確認の措置については、介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用を控えさせるようなことは認められていないが、具体的にどういった場合が取得を控えさせるようなことに該当するのか。
A.  介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用の前例がないことを、ことさらに労働者に強調することなどが考えられる。

解説

現行法では、育児休業等に関する制度等については個別の周知および育児休業取得の意向を確認することが義務づけられていますが、介護に関する制度については義務づけられていません。改正後は、この「個別周知・意向確認」のしくみが介護にも適用されます。具体的には、対象家族が介護を必要とする状況に至ったことを申し出たときは、介護休業に関する制度および介護に関する両立支援制度等について個別に知らせるとともに、介護休業取得等の意向を確認する措置が義務づけられます。

この個別周知・意向確認の対象者が出向者である場合について、Q&Aでは、出向元との間に労働契約関係が存在しない転籍出向した労働者については転籍出向先の事業主が個別の周知・意向確認を行い、在籍出向者については賃金の支払い、労働時間管理等が出向先と出向元でどのように分担されているかによって、それぞれケースごとに判断されるべきものとされています。

【Q4-3】

Q. 介護に直面した旨の申出は口頭でもよいか。
A. 口頭でも可能である。

解説

Q&Aによれば、労働者から家族の介護に直面した旨の申出方法について、法令では書面等に限定されていないため、口頭により行うことも可能とされています。この場合、事業主が申出方法を指定する場合は、申出方法をあらかじめ明らかにしておくことが必要です。

なお、Q&Aでは、申出時に過度に煩雑な手続きを設定するなど「労働者が当該措置の適用を受けることを抑制し、ひいては当該措置を講ずることを事業主に義務付けた趣旨を実質的に失わせるものと認められるような手続を定めることは、許容されるものではない」とされています。

【Q4-7】

Q.  個別の周知・意向確認の措置については、介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用を控えさせるようなことは認められていないが、具体的にどういった場合が取得を控えさせるようなことに該当するのか。
A.  介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用の前例がないことを、ことさらに労働者に強調することなどが考えられる。

解説 

介護両立支援制度等の個別周知・意向確認(法21条2項)については、育介指針(※)により、介護休業および介護両立支援制度等の「取得又は利用を控えさせるような形での個別周知及び意向確認の措置の実施は、法21条第2項の措置の実施とは認められない」とされています。Q&Aでは、上記に挙げたもののほか、介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用の申出をしないように抑制する、申し出た場合の不利益をほのめかすといった、職場における介護休業等に関するハラスメントに該当する可能性のある様態も含まれるとされています。 また、仮に一度取得や利用を控えさせるような言動があった後に、個別の周知・意向確認の措置があらためて行われた場合であっても、すでに行われた取得や利用を控えさせるような言動を含め、実施された措置全体として取得や利用を控えさせる効果を持つ場合には、措置を実施したものとは認められないとされています。

正式名称は、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」

(2)介護両立支援制度等の早期の情報提供の義務づけ

【Q4-9】

Q.  「介護に直面する前の早い段階での両立支援等に関する情報提供」について、たとえば、 年度当初などに対象となる労働者を一堂に集めてまとめて実施してもよいか。
A.  まとめて実施しても差し支えない。

解説 

(1)の個別周知・意向確認は労働者から申出があった場合に行う措置ですが、それとは別に、介護に直面する前の早い段階で、労働者に対して介護休業に関する制度および介護に関する両立支援制度等について知らせる(情報提供する)ことが義務づけられます。

この早期の情報提供について、Q&Aでは、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるために行うものであり、年度当初などに対象者を一堂に集めて実施することも可能とされています。なお、早期の情報提供の周知の時期は、以下の①または②のいずれかとされています。

①  労働者が40歳に達する日の属する年度の初日から末日までの期間
②  労働者が40歳に達する日の翌日から起算して1年間

(3)介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備の義務づけ

【Q4-12】

Q. 介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするための、育児・介護休業法22条2項および4項に規定する雇用環境の整備等のうち、1号の「研修の実施」については、
① 年度当初などにまとめて研修を実施してよいか。
② オンラインでの研修の実施も可能か。
③ 厚生労働省のホームページに掲載されている介護休業や介護両立支援制度等に関する資料の会社掲示板への掲載、配布でも雇用環境の整備を措置したものとして認められるか。
A. ① まとめて実施しても差し支えない。
② 動画によるオンライン研修も可能である。
③ 研修を実施したこととはならない。

解説 

改正法施行後は、介護休業および介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主に対し、㋐研修の実施、㋑相談体制の整備(相談窓口の設置)、㋒介護に関する両立支援制度等の利用事例の収集・提供、㋓介護に関する両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じることが義務づけられます。

質問の①~③について、Q&Aでは、以下のとおりとされています。

①について、研修を年度当初などにまとめて実施することは可能です。なお、研修の実施対象者については、雇用するすべての労働者に対して行うことが望ましいとしつつ、少なくとも管理職に該当する労働者については研修を受けたことのある状態にしておく必要があるとされています。

②について、動画によるオンライン研修とすることも可能ですが、その場合、事業主の責任において、受講管理を行うこと等により、労働者が研修を受講していることを担保することが必要とされているので注意が必要です。

③について、研修とは、一般的に「知識等を高めるために、ある期間特別に勉強をすること。また、そのために行われる講習のこと」を意味し、単に資料や動画の会社掲示板への掲載や配付のみでは、研修を実施したことにはならないとされています。

 
【Q4-13】

Q. 介護に直面している社員がおらず、また、採用する予定がない場合でも、雇用環境整備をする必要はありますか。
A. 雇用環境整備をする必要がある。

解説 

介護休業や介護両立支援制度等の対象となる家族には、直系の祖父母や配偶者の父母も含まれることから、幅広い年齢の労働者が介護休業申出や介護両立支援制度等の利用にかかる申出を行う可能性があります。また、雇用環境の整備の措置を求めている育児・介護休業法22条2項および4項では、、義務の対象となる事業主を限定していないため、すべての事業主が雇用環境を整備する必要があります。

3.おわりに

今回は『令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A』から介護に関連する内容の一部を見てきました。改正法施行に向けて、雇用環境の整備をはじめ、個別の周知・意向確認や早期の情報提供などの改正事項への理解を深め、具体的な実務対応を進めることが肝要です。

以上


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