2024.12.15
法改正情報
【2025年(令和7年)4月施行】改正雇用保険法・新たな育児関連給付の創設(後編) ~ 育児時短就業給付金の概要 ~
雇用保険法の改正により、2025年4月1日から新たな育児関連給付として「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が創設されます。前回は、「出生後休業支援給付金」の概要について解説しましたが、今回は、もう一つの新設給付である「育児時短就業給付金」の概要について解説します。
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【2025年(令和7年)4月施行】改正雇用保険法・新たな育児関連給付の創設(前編)
1.育児時短就業給付金の概要
育児時短就業給付金とは、雇用保険の被保険者が2歳未満の子を養育するために、所定労働時間を短縮して就業(以下、「育児時短就業」という。)している場合に、育児時短就業中に支払われた賃金額の最大10%相当額が給付される制度です。
(1)受給要件
育児時短就業給付金を受給するためには、2歳未満の子を養育している被保険者が育児時短就業をしている場合であって、下記の①または②のいずれかに該当する必要があります。
① | 原則として育児時短就業(※)開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること(ない場合は、賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月も含めて12ヵ月以上あること) |
② | 育児時短就業にかかる子について、育児休業給付金または出生時育児休業給付金を受けていた場合であって、それぞれの給付金にかかる育児休業または出生時育児休業終了後に引き続き育児時短就業をしていること |
なお、育児時短就業給付金は、2025年4月1日以降に開始する育児時短就業から対象となります。
※ 2回以上の育児時短就業を行った場合は初回の育児時短就業開始日前
(2)支給される期間
育児時短就業給付金は、被保険者が育児時短就業を開始した日の属する月から当該育児時短就業を終了した日の属する月までの期間内にある月(以下、「支給対象月」という。)について支給されます。ただし、その月の初日から末日まで引き続いて被保険者であり、介護休業給付金または育児休業給付金、出生時育児休業給付金もしくは出生後休業支援給付金の支給を受けることができる休業をしなかった月に限ります。
(3)支給金額
育児時短就業給付金の支給金額は、支給対象月に支払われた賃金により、以下のとおり算出されます(図表1参照)。
【図表1】育児時短就業給付金の額
各対象月に支払われた賃金の額 | 支給対象月に支払われた賃金額×10/100 |
---|---|
「育児時短就業開始時賃金日額」×30の 90/100未満 |
支給対象月に支払われた賃金額×10/100 |
「育児時短就業開始時賃金日額」×30の 90/100以上100/100未満 |
支給対象月に支払われた賃金額×省令で定める率 |
図表1の「育児時短就業開始時賃金日額」とは、育児時短就業を開始した日の前日を離職の日とみなして算定された賃金日額に相当する額をいいます。ただし、育児休業給付金を受けていた場合であって、当該育児休業終了後に引き続き育児時短就業をしている場合、あるいは出生時育児休業給付金を受けていた場合であって、当該出生時育児休業終了後に引き続き育児時短就業をしている場合は、それぞれの休業開始時賃金日額とされます。
また、「省令で定める率」とは、最大の給付率である10/100から一定の割合で逓減するように定められた率であり、対象月に支払われた賃金の額が100/100に近づくほど給付金の額は低くなります。これは、時短後の賃金と給付額の合計が時短前の賃金を超えないように給付率を調整するためです。この賃金額と給付率の関係を図にすると図表2のとおりです。
【図表2】賃金額と給付率の関係(イメージ)
2.育児時短就業給付金の申請方法について
次に、育児時短就業給付金の申請方法について見ていきます。
育児時短就業給付金の支給申請は、「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短給付金支給申請書」を事業主経由で所轄のハローワークに提出することとされています。また、育児時短就業給付金の申請にあたっては、1週間の所定労働時間が短縮されていることが分かる書類や休業開始時賃金証明票、母子手帳などの添付が必要です。
なお、支給申請の手続きは、支給対象月の初日から起算して4ヵ月以内にハローワークに提出することとされています。
3. おわりに
今回は、新たに創設されることとなった育児時短就業給付について見てきました。出生後休業支援給付と同様に、本稿執筆時点(2024年12月15日)では、実務上の取扱いに関する情報はまだ公開されていませんが、申請にあたっては、添付書類の情報収集等の実務対応が必要となりますので、改正後に速やかに手続きができるよう最新の情報を確認するようにしましょう。
以上
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