2024.12.01
法改正情報
【2025年(令和7年)4月施行】改正雇用保険法・新たな育児関連給付の創設(前編) ~ 出生後休業支援給付金の概要 ~
2024年6月12日に公布された「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」により、雇用保険法が改正されることとなりました。この改正により、現行の育児休業等に関する給付体系が変更され、2025年4月1日より、新たに「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が創設されます。
今回は、出生後休業支援給付金の概要について解説します。
1.育児休業等に関する給付体系の変更
今回の改正では、既存の「育児休業給付」(育児休業給付金および出生時育児休業給付金)に加えて、新たに「出生後休業支援給付」(出生後休業支援給付金)および「育児時短就業給付」(育児時短就業給付金)が創設され、育児休業給付とあわせて「育児休業等給付」となります。給付体系を整理すると図表1のとおりです。
【図表1】育児休業等給付の体系※赤字が変更
2.出生後休業支援給付金の概要
出生後休業支援給付金とは、子の出生直後の一定期間以内に夫婦ともに育児休業を取得した場合に、休業開始前賃金の13%相当額が給付される制度です。これにより、既存の育児休業給付(67%相当額)と合わせると給付率が80%となります。以下、詳しく見ていきます。
(1)受給要件
出生後休業支援給付を受給するためには、下記の①~③のいずれにも該当する必要があります。
① | 原則として出生後休業※1開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること(ない場合は、賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月も含めて12ヵ月以上あること) |
② | 対象期間内にした出生後休業※1の日数が通算して14日以上であること |
③ | 配偶者が子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に通算して14日以上の出生後休業※1をしていること |
※1 対象期間内にする育児休業給付の対象となる育児休業または出生時育児休業
②における対象期間とは、産後休業を取得しなかった場合(主に男性)は子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間、産後休業を取得した場合(出産した女性)は子の出生の日から起算して16週間を経過する日の翌日までの期間とされます。なお、産後休業を取得した場合で、出産予定日前に子が出生したときは、出生日から、出産予定日から起算して16週間を経過する日の翌日までが対象期間とされ、出産予定日後に子が出生したときは、出産予定日から、出生日から起算して16週間を経過する日の翌日までが対象期間とされます。出産予定日と出生日が異なる場合の対象期間については図表2のとおりです。
【図表2】出産予定日と出生日が異なる場合の対象期間
③における配偶者とは、婚姻の届出をしていないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある者が含まれます。なお、配偶者が産後休業を取得している場合や、専業主婦(夫)等で雇用保険に加入していない場合、配偶者がいない場合等は、③の要件は適用されず、①、②の要件を満たすことで給付を受給することができます。
(2)支給される期間
出生後休業支援給付金が支給される日数は最大で28日であり、この出生後休業を複数回に分けて取得した場合には、合算して28日まで支給されます。具体的な支給のイメージは図表3のとおりです。
【図表3】給付のイメージ ※( )内は給付率
(3)支給金額
出生後休業支援給付金の支給金額は以下の計算式で求められます。
休業開始時賃金日額※2×対象期間内に出生後休業をした日数(最大28日)×13/100 |
既存の育児休業給付金(180日まで)および出生時育児休業給付金は休業開始前賃金の67%相当額が給付されますので、それらとあわせて80%相当額の給付金を受け取ることができます。休業中は、社会保険料の負担がないことや、各給付金が非課税であることから、出生後休業支援給付金の受給により、休業開始前の手取り相当額の給付金が受け取れる計算になります。
※2 条文上は「出生後休業(中略)を開始した日の前日を受給資格にかかる離職の日とみなして第17条の規定を適用した場合に算定されることとなる賃金日額に相当する額」とされている。
3.出生後休業支援給付金の申請方法について
次に、出生後休業支援給付金の申請方法について見ていきます。
出生後休業支援給付金の申請は、原則として、育児休業給付金の初回申請または出生時育児休業給付金の支給申請と合わせて行うこととされており、具体的には「育児休業給付受給確認票・(初回)育児休業給付金/出生後支援給付金支給申請書」または「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援金支給申請書」を事業主経由で所轄のハローワークに提出することとされています。また、出生後休業支援給付金の申請にあたっては、配偶者が出生後休業を取得している旨を証明する書類の添付が必要です。
なお、育児休業給付金の初回申請および出生時育児休業給付金の支給申請の手続き終了後に出生後休業支援給付金を受けられることとなった場合は、「出生後休業支援給付金支給申請書」により申請が可能です。
4.おわりに
今回は、新たに創設されることとなった出生後休業支援給付について見てきました。2024年10月28日に省令が発表されていますが、申請用紙の様式や添付書類の詳細等、実務上の取扱いに関する情報はまだ公開されていないため、今後、業務取扱要領等において明らかになるものと考えられます。
次回は改正用保険法のうち、もう一つの新設給付である「育児時短就業給付」について解説します。
以上
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