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人事労務コラム Column

2024.09.15

法改正情報

【2024年10月改定!】令和6年度 地域別最低賃金について

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2024年8月29日に厚生労働省より、令和6年度の地域別最低賃金額の答申状況が公表されました。今年度の改定額の全国加重平均は1,055円で昨年度からの上昇額は51円となり、1978年度に目安制度が始まって以降、最高の引上げ額となりました。

最低賃金は、近年、大幅な引上げが続いていますが、これは2000年代半ばに最低賃金で働いた場合の手取り額が、生活保護水準を下回る逆転現象が社会問題化したことに加えて、ここ数年の急激な円安による物価高騰や人手不足などが背景にあります。2008年7月の改正法施行以降では、全国平均で350円以上の引上げが行われています。

今回は、先日発表された各都道府県の令和6年度最低賃金の改定額について見ていきたいと思います。

1.引上げ目安額と各都道府県の状況

各都道府県の引上げ目安額は、毎年度、中央最低賃金審議会から各都道府県の経済実態に応じて区分されたA~Cのランクごとに示されます。例年、都市部のAランクが高い目安額となる傾向にありましたが、今年度は地域間格差への配慮の観点から、Aランク、Bランク、Cランクすべて一律で「50円」とされ、この目安額を参考に各地方最低賃金審議会から各都道府県労働局長に対して答申がなされました。

答申の結果、今年度は、北海道、茨城、栃木、岐阜、静岡、三重、滋賀、広島が新たに1,000円を超えたことで、全都道府県のうち16都道府県で最低賃金が1,000円を超えることとなりました。また、今年度は急激な物価高への対応や地域間の人材獲得競争の観点から、目安額より大幅な上乗せをする県が昨年以上に多く見られました。具体的には、27県において目安額を上回る答申がなされ、中でも引上げ額が最も高かった徳島では、他県と比べて大幅な引上げとなる84円の引上げとなり、愛媛で59円、島根で58円、鳥取で57円、佐賀、鹿児島、沖縄で56円、青森、福島、高知、大分、宮崎で55円が上乗せされることなりました。

答申された改定額は、10月1日より順次発効されます。なお、関係労使からの異議申出があった場合には、異議申出にかかる調査審議を経たうえで発効されます。

2.各都道府県の最低賃金

各都道府県の令和6年度地域別最低賃金額および発効年月日は下表のとおりです。

【各都道府県の令和6年度地域別最低賃金】

3.最低額と最高額の差

前述したとおり、地域別最低賃金は都道府県ごとに定められており、従来から地域間格差が問題視されてきましたが、この比率は10年連続で縮小しており、都市部と地方における最低賃金の格差は徐々に縮小しています。

今年度の改正後の最高額と最低額の差は212円とまだ小さくはありませんが、昨年度より格差解消のために「目安制度ランク区分数」の変更がなされ、A~Dの4ランクから、A~Cの3ランクに変更されています。また、今年度は引上げ目安額がA~Cのすべてのランクにおいて一律で「50円」とされたことに加え、地方では目安額より大幅な上乗せがなされたことから、最高額(東京)1,163円と最低額(秋田)951円の比率は81.8%となったことで、昨年の80.2%より格差が縮小しており、来年度以降もさらなる縮小が見込まれます。

【地域別最低賃金の最低額と最高額の推移】

4.おわりに

昨年度、政府が目標としてきた全国加重平均が1,000円を超えたことを受け、昨年8月に行われた「新しい資本主義実現会議」において、「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円まで引き上げる」という新たな目標が掲げられました。また、今年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024改訂版」でも、「労働生産性の引上げ努力等を通じ、2030年代半ばまでに 1,500 円となることを目指す目標について、より早く達成ができるよう、中小企業・小規模事業者の自動化・省力化投資や、事業承継、M&Aの環境整備等について、官民連携して努力する」とされていることから、全国加重平均1,500円を目指して、来年度以降もさらなる引上げが行われる可能性が高いものと考えられます。

さらに地方では、人手不足の状況下で人材獲得競争が激化しており、他県への人材流出を防ぐため、来年度以降も最低賃金引上げ目安額より大幅な上乗せを行う傾向が続くことが予想されます。

以上

 


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