2023.04.15
法改正情報
【2024年4月改正】障害者の法定雇用率等が変わります
2023年3月に障害者雇用促進法施行令(以下「改正政令」という。)が改正され、障害者の法定雇用率(以下「雇用率」という。)が2024年4月から段階的に引き上げられることとなりました。
また、「障害者総合支援法等の一部を改正する法律」(2022年12月16日公布)により障害者雇用促進法が改正され、2024年4月から、とくに短い労働時間で働く重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者について、雇用率に算入できるようになること等が予定されています。
今回は、障害者雇用促進法の概要と雇用率等に関する改正事項について見ていきます。
次回コラム: 【2023年4月改正】男性労働者の育休取得率等の公表とは~ 制度の概要と公表内容について ~
目次
1.障害者雇用促進法における障害者雇用義務
障害者雇用促進法では、常時雇用する労働者数に一定の雇用率(民間企業は2.3%)を乗じた人数の障害者を雇い入れることが事業主に義務づけられています。常時雇用する労働者が43.5人以上の民間企業の場合、1人以上障害者を雇い入れる必要があります。
障害者雇用促進法では、少なくとも5年ごとに、常用労働者に対する障害者の割合を勘案したうえで、新たな雇用率を設定することとされています。
2.雇用率の段階的な引上げ【2024年4月以降】
前述のとおり、雇用率は少なくとも5年ごとに設定することとされています。今回の見直しでは、新たな雇用率は2.7%と設定されましたが、雇い入れには計画的な対応が必要であることから経過措置が設けられ、2023年度は2.3%のまま据え置き、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%に段階的に引き上げられることとされました(図表1)。
【図表1 雇用率の引上げ時期】
なお、雇用率の引上げにより、2024年4月以降は常時雇用する労働者が40人以上、2026年4月以降は37.5人以上の民間企業に障害者を雇い入れる義務が生じます。
3.除外率の引下げ【2025年4月1日以降】
障害者雇用促進法では、障害者が就業することが一般的に困難と認められる業種について、常時雇用する労働者から一定割合(除外率)の労働者数を控除することで、障害者の雇用義務を軽減する制度があります。この除外率について、省令の改正により、2025年4月1日以降、それぞれ10%引き下げられることになりました。改正後の除外率は以下の図表2のとおりです。なお、現在の除外率が10%以下の業種については、今回の改正で除外率制度の対象外となります。
【図表2 改正後の除外率】
4.精神障害者の算定特例の延長【2023年4月1日以降】
短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については1人を0.5人として実雇用率を算定することとされています。このうち、精神障害者である短時間労働者については、2022年度末まで短時間労働者を1人としてカウントする特例措置が設けられていましたが、この特例措置が当分の間延長されることになりました。
5.とくに短い時間で働く障害者の雇用率への算入【2024年4月1日以降】
障害者の実雇用率の算定にあたっては、週所定労働時間が20時間以上の労働者を算入することとされていますが、改正により、2024年4月1日以降は、週所定労働時間がとくに短い精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者についても実雇用率に算入できるようになります。改正後の雇用率における障害者数の算定方法は、図表3のとおりです。なお、「週所定労働時間がとくに短い労働者」の週所定労働時間は、10時間以上20時間未満とされる予定です。
【図表3 雇用率における障害者数の算定方法】
6.納付金制度の改正【2024年4月1日以降】
最後に納付金制度の改正について見ていきます。納付金制度とは、雇用率未達成の企業(常用労働者数100人超の企業に限る。)から納付金を徴収する一方、雇用率を達成している企業に対しては調整金または報奨金を支給する制度ですが、今回の改正では、雇用率を超過している人数が一定数以上となる場合の調整金または報奨金の支給単価が引き下げられることとなりました(図表4)。
【図表4 納付金制度の概要と改正内容】
単価が引き下げられる超過人数や単価については、今後政省令で定められますが、労働政策審議会等の資料によれば、超過人数について、調整金は10人、報奨金は35人とされる予定です。
今回の改正では、障害者の職場定着等の取組みに対する支援等を行う助成金が新設・拡充されることになっており、支給単価を引き下げて得られた財源は、これらの助成金に充てられることとされています。
7.最後に
今回見てきた雇用率の引上げならびに雇用率の算定方法等にかかる改正は、2024年4月1日以降施行されます。段階的な雇用率の引上げを見据え、今から自社の採用計画を見直すなど、具体的な検討を行うことが肝要です。
以上
次回コラム: 【2023年4月改正】男性労働者の育休取得率等の公表とは~ 制度の概要と公表内容について ~
ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)