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人事労務コラム Column

2022.11.15

法改正情報

【法改正!2022年7月以降の対応が必要です!】女性活躍推進法 男女の賃金差異の開示義務化の具体的な取扱い(後編) ~ 厚生労働省のQ&Aをもとに賃金差異の公表方法等を解説 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前編では、9月15日に公表された厚生労働省のQ&A『女性活躍推進法に基づく「男女の賃金の差異」の公表等における解釈事項について』の内容を踏まえ、男女の賃金差異の算出方法について解説しました。後編では、算出した男女の賃金差異の公表方法や説明欄の活用方法等について見ていきたいと思います。

▽改正女性活躍推進法の関連コラムをチェックする
-【2022年7月】男女の賃金差異の開示義務化について-
・男女の賃金差異の開示義務化の概要について
・(厚労省Q&Aを基に解説)賃金差異の算出方法について
・(厚労省Q&Aを基に解説)賃金差異の公表方法等について
-【2022年4月】一般事業主行動計画の策定義務等の対象企業の拡大について-
・改正概要および一般事業主行動計画の策定方法等について

 

1.公表の方法および時期

前回見たとおり、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」、「全労働者」の3つの区分ごとに「男女の賃金差異」を公表しなければならないこととされました。この場合の公表の方法および時期は、次の(1)、(2)のとおりです。

(1)公表の方法

男女の賃金差異は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページへの掲載等によって公表することとされています。

(2)公表の時期

男女の賃金差異の公表は、毎事業年度が終了し、新たな事業年度が開始した後、概ね3ヵ月以内に公表することとされています。

なお、初回の公表については本改正の施行日(2022年7月8日)が属する事業年度の終了後、概ね3ヵ月以内とされており、たとえば、事業年度が10月~9月の場合には、概ね2022年12月末まで、事業年度が 4月~3月の場合には、概ね2023年6月末までに公表する必要があります。

関連コラム: 【女性活躍推進法】一般事業主行動計画の策定義務等の対象企業の拡大(労働者数301人以上→101人以上)

 

2.公表のイメージ

男女の賃金差異の公表のイメージは、通達(令4.7.8雇均発0708第2号)や厚生労働省のリーフレット等に示されています。以下の図表は、厚生労働省のリーフレットに掲載されている公表のイメージです。

【図表 男女の賃金差異の公表のイメージ】

  

区分 男女の賃金の差異
(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)
全労働者 XX.X%
正社員 YY.Y%
パート・有期社員 ZZ.Z%

付記事項(例)
・対象期間:〇〇事業年度(〇年〇月〇日~〇年〇月〇日)
・正社員:社外への出向者を除く。
・パート・有期社員:契約社員、パート、アルバイトが該当。
・賃金:通勤手当等を除く。
 
資料出所:厚生労働省リーフレット「2022(令和4)年7月8日施行 女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ 女性の活躍に関する「情報公表」が変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000962289.pdf
 

 

公表にあたっては、図表にあるとおり「付記事項」を表外に記載する必要があり、男女の賃金差異算出の対象となった期間(図表中の「対象期間」)は必ず記載しなければなりません。このほか、算出の前提とした重要な事項(例:①賃金から除外した手当がある場合にはその具体的な呼称等、②正規雇用労働者、非正規雇用労働者について、どのような労働者が該当するか等)について記載することが望ましいとされています。

なお、公表の際、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」という呼称を用いる必要はなく、図表のように「正社員」、「パート・有期社員」等と記載して差し支えありません。また、該当者が存在していない区分については、ブランクではなく、「-」を記載することとされています。この場合、「○○区分には男性の労働者がいないため。」等、その理由を付記事項として記載することが望ましいとされています。

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3.事業主が任意に公表する情報(説明欄の活用)

「男女の賃金差異」に関する情報公表は、求職者等に対して比較可能な企業情報を提供することが目的であるため、すべての事業主が共通の計算方法で数値を公表する必要があります。ただし、「男女の賃金差異」の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するため、事業主の任意で、より詳細な情報や補足的な情報を「説明欄」で公表することができます。厚生労働省の「Q&A」では、一般事業主が任意で行う追加的な情報公表の例として次のようなものが挙げられています。

(例1)自社における男女の賃金の差異の背景事情の説明

女性活躍推進の観点から女性の新規採用者を増やした結果、前々事業年度と比較して相対的に賃金水準の低い女性労働者が増加し、一時的に女性の年間平均賃金が下がり、結果として、前事業年度における男女の賃金の差異が拡大した場合には、その旨を追加情報として公表する。

 
(例2)勤続年数や役職などの属性を揃えた公表

特定の勤続年数や役職などの属性を揃えて算出した場合、男女の賃金の差異が小さいものであることを追加情報として公表する。

① 5年ごとの勤続期間で区分を設定し各区分に該当する労働者について男女の賃金を算出する
② 勤続年数が5年ごとの節目となる年である労働者について、男女の賃金差異を算出する
③ 役職ごとにそれぞれ該当する労働者について、男女の賃金差異を算出する

 
(例3)より詳細な雇用管理区分において算出した数値の公表

正規雇用労働者をさらに正社員、職務限定正社員、勤務地限定正社員および短時間正社員等に区分したうえで、それぞれの区分において男女の賃金の差異を算出し、追加情報として公表する。

 
(例4)パート・有期雇用労働者に関して、他の方法により算出した数値の公表

契約期間や労働時間が相当程度短い非正規雇用労働者を多数雇用している場合に、正規雇用労働者、非正規雇用労働者それぞれの賃金を時給換算して男女の賃金の差異を算出し、当該情報を追加情報として公表する。

 
(例5)時系列での情報の公表

上記(例1)~(例4)までの追加情報について、単年度ではなく、時系列で複数年度にわたる変化を示すことにより、継続的に女性活躍推進に取り組んでいることを説明する。

ただし、共通の計算方法で算出した数値とは別に、前述のような方法により算出した数値を公表する場合には、当該数値のみならず、その算出を行った方法についてもあわせて説明することが適切とされています。

 

4.罰則

女性活躍推進法では、男女の賃金差異の公表を行わなかった場合の直接的な罰則は設けられていませんが、公表義務のある事業主が公表をしなかったり虚偽の公表をした場合、厚生労働大臣は、当該事業主に対して、報告を求め、または助言、指導もしくは勧告をすることができることとされています。また、勧告を受けた事業主がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができるとされています。

また、厚生労働大臣から報告を求められたにもかかわらず、報告をせず、または虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料に処せられる可能性があります。

5.おわりに

今回は、厚生労働省の『女性活躍推進法に基づく「男女の賃金の差異」の公表等における解釈事項について』等の内容をもとに男女の賃金差異の具体的な公表方法や説明欄の活用方法等について見てきました。算出した男女の賃金差異が大きい場合、その内容を分析し、今後の自社の女性活躍推進の取組みの参考とすることが肝要です。

なお、3で見たとおり、自社の実情がある場合には、あわせて追加的な情報として公表することを検討するとよいでしょう。

以上

 


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前回コラム:
(厚労省Q&Aを基に解説)賃金差異の算出方法について

 

関連コラム:
 男女の賃金差異の開示義務化の概要について
 改正概要および一般事業主行動計画の策定方法等について

 

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