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人事労務コラム Column

2022.09.15

法改正情報

改正育児介護休業法の制度の具体的な取扱いとポイント(後編) ~ 厚生労働省の『Q&A』をもとに出生時育児休業期間中の就業に関する取扱いを解説 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前編では、2022(令和4)年7月25日に質問項目が追加された『令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A』のうち、個別周知・意向確認、雇用環境の整備、出生時育児休業(産後パパ育休)の具体的な実務上の取扱いについて見てきました。

後編では、追加されたQ&Aの中から、出生時育児休業期間中の就業に関する具体的な実務上の取扱いについて見ていきたいと思います。

前回コラム(本コラムの前編): 「改正育児介護休業法の制度の具体的な取扱いとポイント(前編)」

 

1. 出生時育児休業期間中の就業について

出生時育児休業の期間中は、就業が可能であることについて労使協定を締結することを前提に、休業期間における所定労働日数の2分の1以下など一定の範囲内において労働者を就業させることができます(制度の詳細は「出生時育児休業の概要と実務上のポイント(前編)」参照)。

2.Q&Aの内容から見る実務対応

それでは、2022年7月25日に追加されたQ&Aのうち、出生時育児休業期間中の就業に関するものについて詳細を見ていくことにしましょう。

なお、Q&Aの内容は、一見して趣旨が分かるよう題名を付し、原文を一部修正のうえ簡潔な内容にまとめています。

◆出生時育児休業期間の年次有給休暇の付与にかかる出勤率算定(Q6-3)

Q.   出生時育児休業は、年次有給休暇の付与にかかる出勤率算定にあたって、出勤したものとみなされるか。また、出生時育児休業中に部分的に就業する予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年休の出勤率算定に含まれない休暇を取得した場合についてはどのようにみなされるのか。
A.   いずれも出勤したものとみなす。
出生時育児休業は、育児・介護休業法に定義されている育児休業に含まれるため、出生時育児休業をした期間についても、年次有給休暇の出勤率の算定にあたっては、育児休業をした期間と同様に出勤したものとみなされます。
また、出生時育児休業中に部分的に就業を行う予定であった日に欠勤した場合や、年次有給休暇の付与にかかる出勤率算定にあたって出勤したものとみなされない休暇(子の看護休暇等)を取得した場合であっても、その日は出生時育児休業期間中であるため出勤したものとみなされます。

 

◆出生時育児休業の対象者について(Q6-9)

Q.  出生時育児休業期間中に就業させることができる労働者について労使協定で定める際に、
「休業開始日の○週間前までに就業可能日を申し出た労働者に限る」といった形で対象労働者の範囲を規定することや、
1日勤務できる者(所定労働時間より短い勤務は認めないなど)、特定の職種や業務(営業職は可だが事務職は不可、会議出席の場合のみ可など)、特定の場所(A店は可だがB店は不可、テレワークは不可など)で勤務できる者、繁忙期等の時期に取得する者等に限定することは可能ですか。
A. 質問のような形で対象労働者の範囲を定めることは可能。
出生時育児休業中に就業させることができる労働者については、質問にあるとおり、労使協定により、勤務時間、職種、部署、時期等を限定することが可能です。

 

◆育児短時間勤務者が休業した場合の就業上限について(Q6-10)

Q.  出生時育児休業中の部分就業の上限について「就業日における労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の2分の1以下であること」とあるが、直前まで育児短時間勤務をしている場合等は1日の所定労働時間は6時間になるのか。それとも出生時育児休業の開始により短時間勤務が終了となり、通常の勤務時間で計算するのか。
A.  短縮前の勤務時間で計算する。
出生時育児休業期間中は、労働者の労務提供義務が消滅し、労務提供義務が存在することを前提とする育児短時間勤務の措置とは両立しないことから、出生時育児休業期間中については、育児短時間勤務の対象にはなりません。したがって、出生時育児休業期間中の就業の上限時間は、短縮前の労働時間をもとに計算することとなります。

 

◆管理監督者の就業について(Q6-11)

Q.  労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者に出生時育児休業期間中の部分就業を行わせることは可能か。
A.  管理監督者にも出生時育児休業期間中の部分就業を行わせることは可能。
管理監督者についても、通常の労働者と同様の手続きを踏んだ上で、出生時育休中の部分就業を行わせることが可能です。
この場合、管理監督者であっても、就業可能な時間帯の申出は、就業規則等で定められた所定労働時間内の時間帯で行うことができ、また、この所定労働時間数をもとに就業可能な時間数の上限(出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の半分)の算出を行う必要があります。

 

◆フレックスタイム制適用者の就業可否について(Q6-12)

Q.  フレックスタイム制の適用される労働者に出生時育児休業期間中の部分就業を行わせることは可能か。
A.  フレックスタイム制が適用される労働者にも部分就業を行わせることは可能。
フレックスタイム制が適用される労働者の取扱いとしては、以下の2つの方法が考えられます。
1つ目は、労働者をフレックスタイム制の対象としたまま出生時育休中の部分就業の対象とする方法です。この場合は、特定の日時の範囲内での始終業時刻の決定を労働者に委ね、実際に労働した時間は、その就業日が属する清算期間における労働時間に算入する等、実際に法令の定めに沿った運用が行われることが必要です。
2つ目は、労働者をフレックスタイム制の対象から外し、通常の労働者の労働時間管理を行うこととした上で、部分就業の対象とする方法です。

 

◆フレックスタイム制適用者の就業申出の取扱い(Q6-13)

Q.  フレックスタイム制が適用される労働者がその適用を受けたまま出生時育休中の部分就業をする場合、労働者の就業可能日等の申出とそれを受けた事業主の提示については、たとえばどのように行うことが考えられるか。
A.  労働者が、就業可能な時間帯と出生時育児休業期間中に就業可能な時間数の最大幅を示し、そのうえで、事業主から就業可能日時の外枠のみを提示し、その枠内での始終業時刻は労働者の決定に委ねることなどが考えられる。
フレックスタイム制の労働者が就業する場合、始終業時刻の決定を労働者に委ねる必要があります。この場合の就業可能な時間帯は、フレキシブルタイムに限定がある場合はその時間帯の範囲内であり、限定がない場合は時間帯の制限はありません。
また、就業時間数の上限については、フレックスタイム制における標準となる1日の労働時間をもとに決定されます。
(例) 1日の標準労働時間:7時間
14 日間の出生時育児休業(出生時育児休業期間中の所定労働日数は10 日)申出可能な時間数は7(時間)×10(日)÷2で35 時間
(申出可能日数は5日が上限)

 

◆フレックスタイム制適用者が部分就業した場合の賃金の支払い(Q6-14)

Q.  フレックスタイム制の清算期間中に出生時育休中の部分就業を行った場合の賃金の支払に関してはどうなるか。
A.  実労働時間が清算期間の総所定労働時間に満たない場合には、その満たない労働時間分を控除した賃金を支払うこととなる。
出生時育児休業期間中に部分就業を行った時間を含む、清算期間の実労働時間が清算期間の総所定労働時間に満たない場合には、その満たない労働時間分を控除した賃金を支払うことになります。

 

◆ 事業場外みなし労働時間制適用者の就業可否について(Q6-15)

Q.  事業場外労働のみなし労働時間制の適用される労働者に出生時育児休業期間中の部分就業を行わせることは可能か。
A.  事業場外労働のみなし労働時間制の適用される労働者にも出生時育児休業期間中の部分就業を行わせることは可能。
事業場外みなし労働時間制が適用される労働者の取扱いとしては、以下の2つの方法が考えられます。
1つ目は、事業場外における労働時間を算定しがたい業務に引き続き従事させ、労働者を事業場外労働みなし労働時間制の対象としつつ、出生時育休中の部分就業の対象とする方法です。この場合は、必要に応じ業務内容・量の削減などを行い、労働者が特定の日時の範囲を超えて就業することがないこと等、法令の定めに沿った運用が行われることが必要です。
2つ目は、事業場外における労働時間を算定しがたい業務から一時的に外して別の業務に従事させることとした上で、労働者を事業場外みなし労働時間制の対象から外し、通常の労働者の労働時間管理を行うこととした上で、出生時育休中の部分就業の対象とする方法です。

 

◆裁量労働制適用者の就業可否について(Q6-16)

Q.  裁量労働制の適用される労働者に出生時育休中の部分就業を行わせることは可能か。
A.  出生時育休中の部分就業を行いながら裁量労働制の適用を続けることはできない。
裁量労働制が適用される労働者は、その業務の遂行を労働者の裁量に委ねることとされており、かつ、実際の労働時間数を把握しないこととなっています。この点について、出生時育児休業中は、あらかじめ合意した日および時間に行うことを前提とするため、裁量労働制の適用を続けたまま、部分就業を行うことはできません。この場合は、労働者を裁量労働制の対象から一旦除外し、通常の労働時間を行うことによって、」出生時育児休業中の就業が可能となります。

 

◆出生時育休中の部分就業についての休業手当の取扱い(Q6-17)

Q.  出生時育児休業期間中の部分就業を行う日が、使用者の事情による休業となった場合、会社は休業手当を支払う義務があるか。
A.  休業手当の支払いは必要。
休業手当の支払いは、出生時育休中の部分就業であっても、就業日について使用者の責めに帰すべき事由による休業となった場合は、休業手当の支払いが必要です。

 

3. おわりに

今回は『令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A』から2022年7月25日に更新された出生時育児休業期間中の就業に関する実務上の取扱いについて見てきました。出生時育児休業中の就業については、労働基準法の定めによるフレックスタイム制や裁量労働制等の労働時間制度が労働者に適用される場合の運用なども検討する必要があるため、Q&Aにある具体的なケースについて理解を深めておくことが重要です。

以上

 

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