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人事労務コラム Column

2021.11.15

法改正情報

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が創設されます(後編)

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回は、65歳以上の労働者を対象とする「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の概要について見てきましたが、今回はこの制度の具体的な手続きの内容等について見ていきたいと思います。

 

前回コラム(本コラムの前編): 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が創設されます(前編)

 

1.被保険者資格の取得・喪失手続きの流れ

雇用保険マルチジョブホルダー制度における被保険者(以下、「マルチ高年齢被保険者」という。)の資格取得または喪失の手続きは、通常の雇用保険制度の手続きと異なり、労働者本人が主体となって行う必要があります。手続きにあたっては、まず労働者本人が届出用紙を入手して本人欄に記入し、事業主が届出用紙への証明等を行ったうえで、本人がハローワークへ届出を行います。以下の図表は、本人と事業主にかかる取得・喪失手続きの流れを示したものです。

【図表 資格取得・喪失手続きの流れ】

2.資格取得手続きにかかる事業主の留意事項

次に、マルチ高年齢被保険者の資格取得手続きにかかる事業主の留意点について見ていきたいと思います。

(1)雇用保険の成立手続き

これまで通常の雇用保険制度の被保険者がおらず、マルチ高年齢被保険者によって事業所が初めて雇用保険の適用事業所となる場合には、雇用保険の成立手続きが必要になります。この場合、事業所の所在地のハローワークに雇用保険適用事業所設置届の提出が必要です。

(2)資格取得時の事業主証明等

マルチ高年齢被保険者の資格取得日は、本人がハローワークに申し出た日とされています。そのため、本人から届出用紙への証明等の依頼があった場合は、速やかに対応することが求められています。

(3)資格取得日の確認

事業主は、本人から届出用紙への証明の依頼等により、おおよその資格取得時期が分かりますが、正確な資格取得日についてはハローワークから送られてくる通知書により確認することができます。なお、資格取得日以降の労働に対する賃金には雇用保険料がかかりますので注意が必要です。

3.資格喪失時の事業主の留意事項

続いて、資格喪失手続きにおける留意点について見ていきます。

(1)資格喪失日の確認

2つのうち一方の事業所を離職したり、雇用契約の変更により一方のみで週所定労働時間が20時間以上になったりするなど適用要件に該当しなくなった場合には、両方の事業所でマルチ高年齢被保険者の資格を喪失します。この場合の資格喪失日はハローワークから送られてくる通知書により確認することができます。なお、資格喪失日以降の労働に対する賃金については雇用保険料はかかりません。

(2)離職証明書の作成

雇用が継続しており雇用契約に変更のない事業所についても、本人から求めがあった場合には、離職証明書を作成する必要があります。これは、本人が失業等給付を受給する際に、ハローワークにおいて2社それぞれの被保険者期間の確認が必要になるためです。

(3)通常の雇用保険の資格取得

自社のマルチ高年齢被保険者の雇用契約に変更があり、通常の雇用保険の適用要件に該当した場合、本人がマルチ高年齢被保険者の資格喪失手続きを行うとともに、事業主は通常の雇用保険の資格取得の届出を行う必要があります。

4.おわりに

今回は、マルチ高年齢被保険資格の取得・喪失手続きにおける実務上の留意点について見てきました。雇用保険マルチジョブホルダー制度は、被保険者としての適用を希望する労働者本人が主体となって手続きを行うなど、適用要件だけでなく手続きも特殊なものとなっています。労働者から申出の可能性がある事業所では厚生労働省HPで公開されているパンフレットやQ&Aなどを確認しておくとよいでしょう。

※参考:厚生労働省HP「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html

以上

 

 

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

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