2021.05.27
法改正情報
改正女性活躍推進法のポイント(101人以上の企業も行動計画の策定が義務化されます)
2019年6月に公布された改正女性活躍推進法により、2022年4月1日以降、一般事業主行動計画の策定義務の対象が、101人以上300人以下の企業に拡大されます。そこで今回は、「女性活躍推進法」の改正内容について解説します。
1.女性活躍推進法とは
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、「女性活躍推進法」という)は、急速な少子高齢化や国民の需要の多様化、その他社会情勢の変化に対応するため、「職業生活を営み、または営もうとする女性」がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することが一層重要であるとして、女性の活躍の推進についてその基本原則を定めるとともに、国、地方公共団体、企業に対して女性が活躍するために実施すべき事項を定めた法律であり、2016(平成28)年4月1日から2026(令和8年)年3月31日までの10年間の時限立法です。2019(平成31)年の国会(第198回通常国会)で「女性活躍推進法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、同年6月5日に公布されました。
2.改正の概要
「女性活躍推進法等の一部を改正する法律」は、女性活躍推進法のほか、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)、男女雇用機会均等法等の改正を含みますが、このうち、女性活躍推進法の主な改正事項は次のとおりです(図表1参照)。
①一般事業主行動計画の策定・届出および情報公表を義務付ける対象企業の拡大
②情報公表項目の拡大
③新たな特例認定制度「プラチナえるぼし」の創設
④虚偽の情報を公表した場合の企業名公表
図表1にあるとおり、②~④はすでに2020年に施行済みです。今回は、2022年4月施行となる①の改正事項について解説していきます。
(図表1)
3.義務対象企業の拡大
(1)一般事業主行動計画の策定・届出
まず、改正内容について解説する前に、現行法における制度を確認します。
現行法では、常時雇用する労働者の数が301人以上の企業(国および地方公共団体以外の事業主)は、自社の女性の活躍を推進するための「一般事業主行動計画」(以下「行動計画」といいます)を策定することが義務付けられています。行動計画には少なくとも次の①~④の事項を定めることとされています。
①計画期間
②数値目標
③取組みの内容
④取組みの実施時期
行動計画は、あらかじめ自社の「採用者に占める女性の割合」、「男女の勤続年数の差異」、「労働時間の状況」、「管理職に占める女性労働者の割合」のデータ(基礎4項目)およびその他の任意項目のデータにより女性活躍の状況を把握したうえで、改善すべき課題について分析(状況把握・課題分析)した結果を勘案して定めなければならないこととされています。
策定した行動計画は、労働者に周知したうえで都道府県労働局に届け出る必要があり、自社のホームページまたは厚生労働省の「女性の活躍推進データベース」に掲載するなどして、社外に向けて公表をしなければなりません。なお、現行法では300人以下の企業は努力義務とされています。行動計画の策定・届出の流れは、図表2のとおりです(図表2参照)。
(図表2)
(2)情報の公表義務
現行法では、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主は、行動計画策定のほか、女性の活躍に関する情報を公表することが義務付けられています。これは主に就職活動中の学生など、求職者の企業選択に資することを目的としています。公表すべき項目は2020年6月1日に施行された改正法(2.の②)により、「女性労働者に占める職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分ごとに定められた「採用者に占める女性の割合」や「男女の平均勤続年数の差異」、「管理職に占める女性の割合」、「男女別の育児休業取得率」などの項目について、区分ごとに少なくとも任意の1項目以上(合計2項目以上)を公表することとされています。
なお、現行法では、300人以下の企業については行動計画と同様に努力義務とされています。
(3)101以上の企業に対象拡大
以上のように、現行の女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が301人以上の企業に対して、①女性の活躍を推進するための行動計画(一般事業主行動計画)の策定・届出および②自社の女性の活躍状況に関する情報公表を義務付けています。これらは300人以下の企業についてはいずれも「努力義務」とされており、行動計画の策定や情報公表をしなくても法律違反となることはありませんでしたが、改正法が施行される2022年4月1日以降は、この義務の対象となる企業の規模が101人以上となります。つまり、現在は「努力義務」となっている常時使用する労働者101人以上300人以下の企業が2022年4月1日より新たに「義務」の対象となり、行動計画の策定・届出および情報公表を求められることになります。
なお、「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、以下のいずれかに該当する場合は、常時雇用する労働者となります。
①期間の定めなく雇用されている
②期間雇用者で、1年以上引き続き雇用されているまたは雇入から1年以上引き続き雇用されると見込まれる
したがって、対象企業となるか否かの判断にあたっては、正社員だけでなく、一定期間以上雇用されている期間雇用の契約社員やアルバイト等も含めた労働者数を用いることになりますので、注意が必要です。
4.おわりに
今回の女性活躍推進法の改正は、2016年の女性活躍推進法の施行時と同様、施行日までに新たな行動計画策定等の対応が必要となります。
特に、行動計画と情報公表義務の対象拡大については、行動計画策定にあたってデータ分析や課題の把握等が必要となり、一定の準備期間を要しますので、早めに改正法施行に備えることが重要です。
ヒューマンテック経営研究所
役員 島 麻衣子(特定社会保険労務士)
※本コラムは、「ビジネスガイド」(2019年10月号日本法令発行)に執筆した内容を一部編集したものです。