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人事労務コラム Column

2019.10.01

法改正情報

在留資格「特定技能」の概要と雇入れ時の留意点

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2018年12月に改正入管法が成立し、2019年4月から新たな在留資格「特定技能」での外国人材の受入が可能となりました。

この特定技能制度は、わが国で進行する深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性と技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることを目的とするもので、今後、ますます人手不足の深刻化やグローバル化の進展が見込まれる中、多くの企業において外国人労働者の雇用の検討が進められていくものと思われます。

そこで、今回は、「特定技能」の概要と特定技能外国人を雇い入れる際の留意点について見ていきたいと思います。

1.特定技能とは

新たに創設された特定技能制度は、生産性の向上や国内人材の確保に向けた取組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある「特定産業分野」について、一定の専門性と技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることを目的とするもので、本制度の対象となる特定産業分野には、介護や建設、外食など14の分野が指定されています。

特定技能は、特定産業分野に属する相当程度の知識や経験を必要とする技能が求められる業務に従事する「特定技能1号」と、さらに熟練した技能が求められる業務に従事する「特定技能2号」に分類されます。「特定技能1号」は14の特定産業分野においてすでに受入れが始まっている一方、「特定技能2号」については建設業など2分野のみ受入れが可能とされており、制度そのものはまだ始まっていません。

2.特定技能雇用契約の締結

特定技能の在留資格を持つ外国人を雇い入れる場合、労働基準法に基づく労働条件通知書の交付だけでなく特定技能雇用契約を締結しなければならないこととされています。

特定技能雇用契約は、所定労働時間や報酬の額が日本人と同等以上であることや、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的取扱いをしてはならないことなど、法務省令の定める基準に合致するものでなければなりません。

3.雇入れ事業主の届出義務

特定技能の在留資格を有する外国人との間で新たに契約を締結・変更した場合や契約が終了となった場合、雇入れ事業主は14日以内に所定の様式で出入国在留管理局に届出をしなければなりません。

また、外国人労働者であっても、雇用保険や社会保険の加入要件を満たす場合には、それぞれ資格取得手続きを行う必要があります。

4.受入機関の基準

特定技能の在留資格を有する外国人を雇い入れようとする場合、雇入れ企業は一定の基準を満たさなければならないこととされています。

具体的には、受入れ企業が労働・社会保険および租税に関する法令を遵守していることや、1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと、1年以内に受入機関の責めによる行方不明者を発生させていないこと、労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていることなど、一定の基準に適合している必要があります。

5.特定技能外国人支援計画の基準

特定技能1号に求められる技能の水準は「相当程度の知識または経験」とされており、これは「特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準」をいうこととされています。しかし、慣れない異国の地で働く外国人にとっては、日常生活を送るだけでも相当の負担となります。このため、特定技能1号の外国人を雇い入れるにあたっては、その外国人に対して特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上の支援に加えて、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画を作成し、適正に実施することが必要とされています。

具体的には、外国人に対する入国前ガイダンスの実施や、入国・帰国時の空港等への出迎え・見送り、保証人となることその他外国人の住宅の確保に向けた支援の実施、外国人からの相談・苦情への対応、などの内容を記載した計画を作成し、出入国在留管理局へ提出することが必要となります。

6.登録支援機関への委託

これまで見てきたとおり、特定技能1号は、従事する業務について相当程度の知識や経験を有していると認められる者の在留資格ですが、言語や文化の違いについては不慣れなケースが多いことから、職業生活のみならず日常生活も含め広範囲にわたって支援することが求められます。これらに対応するために新たな人員を手配したり、必要な体制を整備する負担は決して小さいものとはいえず、スムーズな受入れに影響を及ぼすことが懸念されますが、外国人に対する支援については、登録支援機関に支援の全部を委託することも可能とされています。

7.さいごに

特定技能外国人は、介護や建設、外食など人手不足が深刻な分野において即戦力としての活躍が期待されますが、特定技能雇用契約の締結や行政官庁への届出、支援計画の作成など、通常の雇入れとは異なる点が多々あるため、制度の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。

また、特定技能1号については、在留期間の上限が通算で5年までとされていますので、5年を超える期間について人材の確保が必要な場合には、一定期間ごとに人材の入替えを行ったり、更新回数に制限のない他の在留資格に切り替えるなどの対応についても検討が必要となります。

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原 伸吾(特定社会保険労務士)

※本コラムは、「日経トップリーダー」経営者クラブ『トップの情報CD』(2019年10月号、日経BP発行)での出講内容を一部編集したものです。

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