2015.06.01
特集
多様な人材の確保と活用
昨今、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が急速に進む中で、優秀な人材の確保と活用は、多くの企業で大きな問題となっています。そこで今回は、人材の確保と定着のためにどうすればよいかについて、ポイントを解説したいと思います。
<人材の確保>
では、まず人材の確保について考えてみましょう。
1.人材像の明確化
多様な人材を確保するためには、まずどんな人材を求めるのか、人材像を明確にすることが大切です。一口に人材と言っても、新規学卒者をはじめとする若年層から中堅層、中高齢層までいくつかの世代区分がありますし、募集目的も欠員補充から事業拡大のための即戦力人材までさまざまです。また、経営幹部候補やマネージャーなど、一定の階層に就く人材も考えられます。さらには、一般事務職やIT関係のエンジニア、営業職やラインの技能職を求めることもあります。
人材像を明確にするには、これらの点を整理することが大切です。
2.募集
募集を成功させるためには、求める人材に合った募集方法を選択することが大切です。新卒者は、学校の先生とのパイプづくりが鍵となりますが、経営者団体等が行う共同募集への参加やインターンシップなどが活用されているケースもあります。
中途採用の場合は、ハローワークのほか人材紹介や紹介予定派遣、インターネットによる口コミ募集が普及していますが、フェイスブックなども活用されています。
いずれにせよ、自社の特長を売り込むという視点が大切です。
3.ミスマッチをなくす選考
採用のミスマッチを抑えるためには、経験や知識、能力、技能などのほか、職業適性についても採用基準を明らかにしておくことが大切です。
理想的な応募者は滅多に現れないかもしれませんが、採用基準に照らすことによって、ミスマッチを少なくすることができます。
実際の選考では、人材像にもよりますが、面接は2~3回行い、採用決定までじっくり評価するよう努めたいものです。
<定着と活用>
つぎに、人材の定着と活用について考えてみましょう。
1.新卒社員に対するメンター制度の活用
新卒社員など、仕事への知識や経験が少ない新入社員に対しては、職業生活全般について支援するメンター制度が早期離職の防止のために有効です。
この制度は、あらかじめ会社が任命した先輩が、担当する新入社員一人ひとりに対して、一定の期間、必要に応じてOJTをしたり、職業生活に関する相談などを受けながらフォローするものです。
2.職場のコミュニケーション機会
近年、IT化が進んでいる企業が多くなっていますが、それに伴って上司と部下、あるいは、従業員間でのコミュニケーションの機会が極端に少なくなっています。そのため、職場の人間関係が弱くなり、様々な問題が起こっています。
そこで、上司と部下の間で、たとえば3カ月とか半年に1回、定期面談を実施したり、職場内での懇親会を実施してコミュニケーションを強めるなどの工夫も考えられます。
3.多様な勤務制度
育児や介護、本人の体力の消耗など個人的事業に合わせて柔軟な勤務形態、勤務時間制度の導入も人材の定着には欠かせません。
具体的には、短時間正社員や勤務地限定正社員、非正規従業員と正社員の相互移行可能な人事制度、フレックスタイム制度等の柔軟な勤務制度の活用などが考えられます。
4.職場環境改善
従業員の定着をよくするためには、マイナス要因を取り除くことも大切です。
(1)セクハラ、マタハラ、パワハラ
その一つは、セクハラ、マタハラ、パワハラの一掃です。
セクハラは「女性の問題」、パワハラ、マタハラは「管理職の問題」ではありません。今、中高生の間では、LINEなどのSNSを使った“いじめ”が問題になっていますが、集団的なパワーによるハラスメントもパワハラの一つです。上司が部下にパワハラされるなどの事件も起きていますし、男性がセクハラを受けて離職するケースもあります。
(2)不払い残業の撲滅
ブラック企業にならないために、不払い残業はなくさなければなりません。残業代を意識的に支払わないことは当然問題ですが、残業代の計算が法律どおりでなく、結果的に違法な状態となっているケースもかなりあります。厳密な検討が必要と思われます。
ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原 伸吾(特定社会保険労務士)
※本コラムは、「日経トップリーダー」経営者クラブ『トップの情報CD』(2015年6月号、日経BP発行)での出講内容を一部編集したものです。」