2023.05.15
法改正情報
【2023年4月改正】男性労働者の育休取得率等の公表とは ~ 実務上のポイントおよび留意点 ~
前回は、従業員が1,000人を超える企業に対して年1回の公表が義務づけられることとなった男性労働者の育児休業等の取得状況に関して、制度の概要や公表内容について見てきました。
今回は、公表にあたって留意すべき実務上のポイントについて具体的に見ていきたいと思います。
前回コラム: 【2023年4月改正】男性労働者の育休取得率等の公表とは~ 制度の概要と公表内容について ~
目次
1.改正後の制度の概要
育児・介護休業法の改正により、2023年4月から、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業について、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務づけられました。該当する事業主は、①育児休業等の取得割合(配偶者が出産した男性労働者数に対する育児休業等をした男性労働者の割合)または②育児休業等および育児目的休暇の取得割合(配偶者が出産した男性労働者数に対する育児休業等および育児目的休暇を取得した男性労働者の割合)のいずれかを公表する必要があります(取得割合の具体的な計算方法等は前回参照。)。
2. 実務上のポイント
ここでは、実務を行ううえで迷いやすい点や留意すべき点について解説していきます。
(1)育児休業等の種類
取得割合を計算するにあたっては、産後パパ育休とそれ以外の育児休業等について分けて計算する必要はなく、産後パパ育休も含めた育児休業等の取得者数について計算すればよいこととされています。
(2)育児目的休暇
公表内容として、1の①または②のいずれかの割合を公表する必要があることは前回触れたとおりですが、2つ目の「育児目的休暇」とは、休暇の目的の一つとして「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度を指し、育児休業や子の看護休暇など法定の制度は含まれません。たとえば、失効年休の育児目的での使用、いわゆる「配偶者出産休暇」制度、「育児参加奨励休暇」制度、子の入園式、卒園式等の行事や予防接種等の通院のための勤務時間中の外出を認める制度(法に基づく子の看護休暇を上回る範囲に限る。)などがこれに該当します。
(3)男性労働者数のカウント方法
育児休業等の取得割合を求める際の「男性労働者数」のカウントにあたっては、育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合等であっても、当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は1人として数えます。
(4)事業年度をまたがって育児休業を取得した場合や分割取得した場合の計算
取得割合の計算にあたっては、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度の数値によることとされていますが、事業年度をまたがって育児休業を取得した場合は、休業を開始した日を含む事業年度に取得したものとして計算します。また、育児休業を分割して取得した場合には、最初に取得した育児休業のみが計算の対象となります。
(5)計算した割合の端数処理
取得割合は、所定の算式により算出された数値の少数点第1位以下を切り捨てたものを公表することとされています。なお、男性労働者の配偶者の出産がなかった場合は、分母が0となり、割合が算出できないため、「-」と表記することとされています。
(6)公表にあたっての明示事項
公表にあたっては、公表する割合とあわせて、下記について明示する必要があります。
・ | 当該割合の算定期間である公表前事業年度の期間 | ||
・ | 算出方法(①「育児休業等の取得割合」または②「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれか) |
(7)公表の時期
公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)の状況について、公表前事業年度終了後、おおむね3ヵ月以内に公表することとされています。事業年度に対応した公表期限の目安は次のとおりです。
【事業年度末(決算時期)に対応した公表期限の目安】
事業年度末 (決算時期) |
初回公表期限 | 事業年度末 (決算時期) |
初回公表期限 |
3月 | 2023年6月末 | 9月 | 2023年12月末 |
4月 | 2023年7月末 | 10月 | 2024年1月末 |
5月 | 2023年8月末 | 11月 | 2024年2月末 |
6月 | 2023年9月末 | 12月 | 2024年3月末 |
7月 | 2023年10月末 | 1月 | 2024年4月末 |
8月 | 2023年11月末 | 2月 | 2024年5月末 |
3.おわりに
法改正で義務づけられた公表内容のほかに、任意で「女性の育児休業取得率」や「育児休業平均取得日数」などを公表することも可能とされています。前回ご紹介した厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」(※)では計算例が紹介されていますので、これらを参考にしながら自社の実績のPRに役立ててはいかがでしょうか。
※ 両立支援のひろば https://ryouritsu.mhlw.go.jp/
以上
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所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)