2022.03.15
法改正情報
2022年4月改正 くるみん・プラチナくるみん認定基準
厚生労働省の認定制度「くるみん・プラチナくるみん」の認定基準について、2022年4月1日以降認定基準が改正されるほか、新たな認定制度が創設されます。今回の改正は、くるみん、プラチナくるみん認定企業を目指す企業にとって大きな影響があります。
そこで、今回はくるみん・プラチナくるみんの認定基準等の改正ポイントについて見ていきたいと思います。
目次
1.次世代育成支援対策推進法の概要
くるみん・プラチナくるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づく制度です。次世代育成支援対策推進法(以下、「法」という。)は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ育成される環境を整備するために、2005年4月1日に10年間の時限立法として施行されました。その後、法改正によりさらに10年間延長され、現在は2025年3月31日までの法律となっています。
法は、常時雇用する労働者数101人以上の企業に対して、労働者の仕事と子育ての両立支援等に関する「一般事業主行動計画」(以下、「行動計画」という。)の策定を義務づけています(常時100人以下の企業は努力義務)。
この行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の認定基準を満たした場合、申請により、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができることとされています。さらに、くるみん認定を受けた企業が、より高い水準の取組みを行った上で一定の基準を満たすと、特例認定(プラチナくるみん認定)を受けることができます。これらの認定を受けた企業は、それぞれ「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」を企業の商品、広告などに使用して、子育てサポート企業として取引先や求職者にアピールすることができます。
2.くるみん・プラチナくるみんの認定基準の改正
それでは、くるみん・プラチナくるみん認定基準の改正等について、詳しく見ていきましょう。今回の改正の概要は以下のとおりです。
(1) | くるみんの認定基準の改正 |
(2) | プラチナくるみんの認定基準の改正 |
(3) | 「トライくるみん」認定制度の創設 |
(4) | 不妊治療と仕事の両立に関する認定制度の創設 |
以下、(1)から(4)についてそれぞれ見ていきます。
(1)くるみんの認定基準の改正
くるみんの認定基準について、現行の10項目の認定基準のうち、男性の育児休業等の取得率に関する基準が引き上げられました。具体的には、下表のとおりです。
男性の育児休業等取得率に関する基準 (①、②のいずれかの基準を満たすことが必要) |
現行 | → | 改正後 |
---|---|---|---|
① 男性の育児休業等取得率 | 7%以上 | → | 10%以上 |
② 男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 | 15%以上 | → | 20%以上 |
また、男女の育児休業等の取得率などを厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することが認定基準として新たに追加されました。
(2)プラチナくるみんの認定基準の改正
プラチナくるみんの認定基準について、今回の改正では、男性の育児休業等の取得率に関する基準と女性の継続就業に関する基準の2つが以下のとおり改正されます。
① 男性の育児休業等の取得率に関する基準の改正
認定基準が以下のとおり引き上げられます。
男性の育児休業等取得率に関する基準 (a)、b)のいずれかの基準を満たすことが必要) |
現行 | → | 改正後 |
---|---|---|---|
a)男性の育児休業等取得率 | 13%以上 | → | 30%以上 |
b)男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 | 30%以上 | → | 50%以上 |
② 女性の継続就業に関する基準
女性の継続就業に関する基準では、下記のa)、b)のうち、いずれかを満たすことが要件とされていますが、今回の改正では、b)の認定基準が引き上げられます。
女性の継続就業に関する基準 | 現行 | → | 改正後 |
---|---|---|---|
a)出産した女性労働者のうち、子の1歳時点在職者割合 | 90%以上 | → | 90%以上 |
b)出産した女性労働者・出産予定だったが退職した女性労働者のうち、 子の1歳時点の在職者割合 |
55%以上 | → | 70%以上 |
(3)経過措置
くるみん・プラチナくるみんの認定基準が改正されることから、認定に関する下記の経過措置が講じられることとなります。
① | 2022年4月1日から2024年3月31日までの間の認定申請は、改正前の認定基準の水準でも基準を満たすこと |
② | 2022年3月31日以前は改正前の基準を前提に取り組んでいることから、認定基準の算出にあたって、2022年4月1日以降から計画期間の終期までを「計画期間」とみなして算出することが可能であること |
3.新たな認定制度の創設
2022年4月以降、トライくるみん認定制度および不妊治療と仕事の両立に関する認定制度が創設されます。
(1)「トライくるみん」認定制度の創設
今回の改正によって、くるみんの認定基準が引き上げられることから、改正前のくるみんと同じ認定基準で認定が受けられる「トライくるみん」制度が創設されます。これにより2022年4月以降、認定制度はトライくるみん、くるみん、プラチナくるみんの3つになります。
なお、これまで、プラチナくるみん認定を受けるためには、くるみん認定を受けていることが必要でしたが、トライくるみん創設後は、トライくるみん認定を受けていれば、くるみんの認定を受けなくてもプラチナくるみん認定を受けることができるようになります。
(2)不妊治療と仕事の両立に関する認定制度の創設
不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境整備に取り組む企業の認定制度(くるみんプラス、プラチナくるみんプラス、トライくるみんプラス)が創設されます。この制度はトライくるみん、くるみん、プラチナくるみんのいずれかの認定基準を満たした上で、次の①~⑤の要件をすべて満たすことが必要です。
① | 不妊治療のための休暇制度を設けていること(多目的休暇を含む) |
② | 不妊治療のために利用できる、半日単位・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークのいずれかの制度を設けていること |
③ | 不妊治療と仕事の両立に関する方針を示し、講じている措置の内容とともに社内に周知していること |
④ | 不妊治療と仕事の両立に関する研修その他の不妊治療と仕事の両立に関する労働者の理解を促進するための取組みを実施していること |
⑤ | 不妊治療を受ける労働者からの不妊治療と仕事の両立に関する相談に応じる担当者を選任し、社内に周知していること |
4.おわりに
今回は、くるみん・プラチナくるみんの認定基準の変更と新たな認定制度トライくるみん等の創設について見てきました。制度改正に伴い、今後認定を目指す企業は、今回の制度改正の内容をよく把握した上で、行動計画の策定や認定基準に関する自社の目標値の設定をすることが求められます。
以上
ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)